
年金の受け取り方、見直したことありますか?
老後の生活を支える「年金」。通常は65歳から受け取ることができますが、この受け取り開始時期は自分で変更することができます。
中でも「繰り下げ受給」という制度を使えば、年金の受給開始を遅らせることで、1ヶ月ごとに年金額が増えるというメリットがあります。「少しでも老後の年金額を増やしたい」と考えている方にとって、選択肢の一つとして知っておきたい制度です。
繰り下げ受給をすると年金額はどのくらい増える?
繰り下げ受給を選ぶと、1ヶ月繰り下げるごとに年金額が0.7%増加します。たとえば65歳から受給できる年金を70歳まで5年間(60ヶ月)繰り下げると、年金額は42%もアップします。

https://www.rakuten-insurance.co.jp/media/article/2021/108/(参照:2025-06-24)
たとえば、65歳からもらう年金が月10万円(年120万円)だとします。70歳まで繰り下げた場合、42%増で月14万2,000円(年170万4,000円)になります。
これを90歳まで受け取ると想定すると、65歳から受け取った場合の総額は約3,000万円(120万円×25年)。
一方で70歳からだと、20年間で約3,408万円(170万4,000円×20年)になります。
でも、その5年間をどう乗り切る?現実的な問題
繰り下げ受給をすれば年金額は増えますが、65歳から70歳までの5年間をどう生活するかが大きな課題です。この期間は年金収入がないため、生活費・医療費・住宅費などをすべて自己資金で賄う必要があります。
たとえば、月20万円の生活費が必要だとすると、5年間で1,200万円の備えが必要になります。退職金や貯金でカバーできる人もいれば、そこまでの資産がない人も多いのが現実です。
無理に繰り下げた結果、貯金を使い果たしてしまい、老後後半の生活が苦しくなるリスクもあります。
また、医療費が増える年代でもあるため、突発的な出費も想定しなければなりません。働いて補うにしても、体力や雇用の不安もあり、思うように収入を得られない場合もあります。
生活保護を受けるわけにもいかず、「繰り下げたのに貧しくなった」と感じる人もいます。
繰り下げを検討する際は、年金額の増加だけでなく、5年間の生活資金の確保ができるかを冷静に見極めることが大切です。
お金が潤沢な人・困窮している人は、繰り下げの必要がない可能性も
年金の繰り下げ受給は「中間層」にとって有利な選択肢になることがありますが、すべての人に適しているわけではありません。
たとえば、すでに数千万円単位の資産を持ち、老後も十分な収入源(家賃収入や投資収益)がある人にとっては、年金に頼る必要がなく、65歳から普通に受け取っても生活には困りません。
むしろ早めに受給して、その分を趣味や旅行、健康づくりなどに使った方が有意義という考え方もあります。
一方で、貯金がほとんどなく、65歳以降すぐに収入が途絶えてしまう人は、年金を繰り下げる余裕がありません。繰り下げて増額を狙うより、早めに受け取って日々の生活を安定させることのほうが優先です。
年金の繰り下げは「資産に余裕があり、老後のリスクにも備えができている人」が選ぶオプションであり、潤沢すぎても、困窮しすぎても、メリットは少なくなる可能性があります。
自分の経済状況や今後の生活設計を考慮して、現実的な判断をしましょう。
たくさんもらえても、健康寿命を過ぎて使いづらいお金になっては本末転倒
繰り下げ受給で年金額を増やしても、受け取り始めた頃には体が思うように動かなくなっているかもしれません。
日本人の健康寿命は平均寿命よりも約10年短いとされており、その差は無視できません。旅行や趣味、外食など「元気なうちに楽しみたいこと」は、健康な期間でこそ価値があります。
年金を増やすことにこだわるあまり、使える時期を逃してしまっては意味がありません。繰り下げることで「使えないお金」になってしまうリスクも、しっかり考慮すべきです。
老後の資金は「長生きの備え」であると同時に、「今を楽しむ手段」でもあります。自分の健康状態や生活スタイルを見直し、バランスの取れた受給時期を選びましょう。
将来のための我慢が、かえって生活の質を下げてしまうこともあるのです。「もらえる額」だけでなく、「どう使いたいか」も含めて受給計画を立てましょう。
年金受給の正解は「人それぞれ」
年金の受給開始時期を一度決めると、後から変更することはできません。しかも、寿命や健康状態は予測が難しく、長生きすれば得になる一方、早く亡くなると損になる可能性もあります。
「とにかく年金額を増やしたい」という思いだけで判断するのではなく、体力・健康・資産状況などを総合的に考えて決めるのが大切です。年金の受給開始時期に「絶対の正解」はありません。人それぞれの状況によって、最適な選択は変わります。
たとえば、60代で病気を経験し、体力に不安がある人は「今のうちに年金を使って、自分の時間を楽しみたい」と思うかもしれません。
一方で、健康で70歳を過ぎても働き続けられる人は、年金の繰り下げによって増額される恩恵を得やすいです。
家族構成、健康状態、貯蓄額、ライフプランによって答えは異なります。
周囲に言われたから、制度上お得だから、という理由だけで判断せず、自分の「人生設計」に沿った選択をすることが大切です。
受給時期の選択は、「人生設計の一部」
老後の生活費は、年金だけでなく医療費や介護費なども含めてトータルで考える必要があります。
また、将来の年金受給額をシミュレーションできる「ねんきんネット」などのツールを活用して、自分に合ったライフプランを組み立てることが大切です。
繰り下げ受給は、人生100年時代における「長生きリスク」に備える手段の一つと言えるでしょう。
まとめ:受給の時期は自由。自分の人生に合った選択を
年金の受給方法に絶対の正解はありません。
繰り下げ受給は、上手に活用すれば老後の生活をより安心なものにしてくれますが、すべての人にとって最良の選択肢とは限りません。
自分の貯金・収入・支出・健康状態・家族構成などをふまえ、冷静に判断しましょう。年金の受け取りは、自分の人生設計そのものです。
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Wrote this articleこの記事を書いた人

あかぐり
クレジットカードを使い続けて10年以上。初めてクレジットカードを作る人に向けて、また、サイトに来てくれた人の経験や知識に「ちょい足し」するべく、クレジットカードの実体験とお金に関する情報を発信しています。